Paul Osicka Interview

Ride BMX 1999年 12月/1月号
ポール オシッカはフラットランド界の教祖だ。ここ2年近く、彼は表舞台から姿を消しているが、彼が自分の信じるべき道を進んでいる事は耳にしていた。長い間、ポールへのインタビューは行われてこなかったが、我々は終にインタビューをシカゴの郊外で行うことが出来た。

 このインタビューのために家を離れる何日か前、ポールが不安だ、と電話をかけてきた。彼は本当にこのインタビューを前向きな、影響力のあるものにしたいと願っていた。しかし十分な心構えが出来ているか確信が持てなかったらしい。実際このインタビューを行った時も、彼は全ての質問に過度に神経質になっていた。だがその結果、ポールは、20インチの自転車に乗っている、というだけではない、「なにか」を持ったライダーということが実証された。

Ride(以下R): 何年くらいスタンダードで乗っているの?

Paul(以下P): 6年。

R:なんでまたスタンダードに乗ることになったの?

P:”A few Good Men”のビデオを撮ったちょっと後、ニューヨークのランページスケートパークで行われたジャムに行ったんだ。確かそこでリック(モリターノ。スタンダードの社長)が前に撮ったビデオの時よりどれだけ進歩したか気づいたんだろう。そこでオファーを受けたんだ。それから彼は俺にTシャツや、ちっちゃなパーツ、アクセル(車輪の軸)とかペグとかを送ってくれるようになった。それからだんだん、今みたいな関係が出来上がったんだ。

R:それがどうやってシグネチャーバイクを作るって話までなったの?

P:彼にそう仕掛けた。選択の余地を与えなかった。

R:リックがその話を持ちかけたの?それとも君から?

P:俺の方からだ。何年かその話は浮いたままになっていて、実物を手にするまではかなり時間がかかった。長い間、俺の頭の中にあったアイディアを、やっとリックが理解してくれたってことかな。

R:そのフレーム、タオは君の思い通りに出来あがってきた?

P:まさに思い描いていたようにね。妥協はしたくなかったから、長い時間がかかったけどね。でも本当にいい感じに仕上がってきたと思う。

R:ライディングにおいて、君は多くのフロントトリックを、2つのフロントブレーキを使ってやっているけど、それはどっから始まったの?

P:俺はずっとフロントのトリックに興味があって、でも、確かにフロントトリックとダブルフロントブレーキ関係に完全にハマったってキッカケはあったね。それで逆にたくさんのトリックをやることになったし、いくつもの新たな扉を開いた。俺はなんでも自分の都合のいいようにしちゃうからね。(笑)フラットランド、っていうだけで十分チャレンジングなのに、これ以上わざわざコトを複雑にする必要はないんじゃないかな?

R:1日どのくらい乗るの?

P:平均すると5時間くらいかな。時には長かったり、短かったりするけど。

R:生活は、完全に自転車中心に回ってる?

P:そうだね。

R:ずーっとそういう感じ?

P:ずーっとだな。

R:家族はそれをどう思ってるのかな?彼らは君がやっていることを理解してる?

P:だいたいね。何人かは違う。他は理解してくれてるかな。俺をサポートしてくれてる人もいれば、そうじゃない奴もいる。俺は協力的な人たちだけと付き合ってるけど。(笑)基本的にそれ以外の人は切り捨ててるね。

R:君のやっているトリックは、他のライダーのものとは全く違うが、そうしよう、と心に決めてやっているの?それともただの思いつき?

P:まだやっていない事はたくさんある。やり残していることは片付けようとしてる。それと、もう既にやられてしまったものからはなるだけ離れようとしてる。みんなそうするべきじゃないかな。

R:それはフラットランド全体の進歩のため?それとも自分個人のため?

P:そうだな、どちらかっていうと自分自身のためかな。何かを考えて実現させる、っていう。凄く難しいけど。誰かやっているコトを見て、やる、っていうのはいたって簡単なことだ。そいつが出来るんだから。俺は、誰かが自分がやっていることと似たことをやっているのを見たら、そのトリックはやめちゃうね。そうやって諦めてきたトリックはいくつもあるよ。俺は人とは違うトリックをやりたいと思っているから。

R:多くのライダーは、トリックを覚えて、それを自分風にアレンジするけど、君の場合、何かを学んだら、次のトリックに移ってしまうみたいだけど、そうなの?

P:たぶん飽きちゃうんだね。やりたいトリックは山ほどある。なにかにコダワリたくないんだ。ただ進歩したい。

R:キミのシグネチャーバイクに乗って、キミみたいな格好をして、キミのトリックをやっているライダーを見たら、自分は成功した、と思う?

P:いや、そういうガキは嫌いだね。死んだほうがいい。(笑)冗談だよ。子供が誰かのマネをするのはいいんじゃない。子供はそういうものだからね。俺もそうだったし。分かる気がする。

R:ポールみたいになりたい!っていう子供にいわれたい?

P:言われたくない、なんて誰が言える?

R:キミに影響を与えたライダーは?

P:Kevin Jones, Chase Gouin, Chad Degroot, Kerry Gattかな。Edger Placenciaは誰よりも俺にインスピレーションを与えてくれたね。他にも数え切れないストリート、ランプライダーから影響を受けた。Joe Rich, Luc-E( John Englebert), Dave Freimuth, Brian Castillo, 特にリック(モリターノ)にはね。

R:ランプやストリートをやったりするの?

P:ちょっとね。ストリートにハマリかけた時期もあったけど、今はフラットに打ち込んでる。

R:ストリートはフラットから解放されるため?

P:そうだね。退屈を紛らすにはもってこいだね。フラットランドは時に単調になる。ストリートは楽しい。ランプで遊ぶのもね。でもそればかりに自分をすり減らしたりしたくないから、深入りはしないようにしてる。フラットは毎日やる必要がある。前に怪我をした時は、本当、人生最悪な時を過ごしたよ。自転車に乗れない生活は地獄だね。それだけは避けたい。

R:ボクも長く自転車に乗れないとイライラする。

P:同じだ。

R:キミは初期のESPNコンテストで優勝したけど、なんで行くのをやめてしまったの?

P:いくつか理由があるけど、なんて言えばいいのかな。(しばしの沈黙)コンテストは最悪だ。だから嫌いなのかな。(笑)いや、コンテストがつまらない訳ではないし、嫌ってもいない。でももっと違う風に、もっと良くなるはずだ。もし行かなくてはならないなら、今の状態でも出ると思うけど、コンテスト無しでも俺はやってこれたからね。

R:例えばスポンサーの圧力とか?

P:いや、もしスポンサーがついてなくとも、それで生活しなければならないなら、出るだろう。少なくとも、出てみようと努力はする。

R:何人かのライダーは、コンテストを、回りに自分を認めさせるために使っているようだけど、キミにとってはそんなことはない?

P:コンテストに勝ったから最高のライダーだなんて考えはバカげてる。ライダーをそんな尺度で測ることはできないんだ。3分間観客の前にいて、カメラはいかにそのライダーが凄いかを映すけど、それは俺にとってのフラットではない。フラットランドは、こうでありたい、と望んだものだ。ただ誰かと競争して、自分のエゴを満たすだけのものではない。ある意味でコンテストは練習の延長なんだ。その純化された環境のなかで、自らの感覚を広げるためのエネルギーになるはずなんだ。ライダーの感覚の強さが、ライダーの回りの世界を定義するんだ。なにかに打ち込むことで、次に繋がるエネルギーを生み出す。そういった心の方向性こそエネルギーとしての価値がある。

R:どのくらいロングビーチ(カリフォルニア)にいたの?

P:長かった。

R:カルフォルニアの気候はいいのに、なんでまた(気候の悪い)シカゴに戻ってきたの?

P:カリフォルニアにいるのに疲れて、変化が欲しかったんだ。またロングビーチに戻るかもしれないけど、それは分からない。今はここにいたいと思う。家族と友達がいるからね。それが戻ってきた理由かな。

R:ビデオを見たり、フラットランドの流行に乗ろうとしてる?

P:友達がビデオを買って来たりした時に見たりするけど、でも影響はされないな。(流行の)流れの中には俺の居場所はない。

R:その流れの中に身を置きたい、と思う?

P:見るのは面白いけど。何人か見てて面白い、と思うライダーはいる。創造力があるような。それとか人とは違うライディングとかね。次に何が来るか分からないライディングはいいね。ほとんどが古い、同じようなのばかりだけどね。

R:誰のライディングが見てて面白い?

P:マーティ(クオッパ)だね。いつでもチャドのライディングは好きだね。チェイスもいい。もちろんケリー(ガット)も。ケリーは一緒に乗っても1番面白いね。

R:みんな、キミはいつも1人で乗っているっていうイメージを持っていると思うけど、今年初め(1999年)にノースカロライナにいた時は、ケリーとたくさん乗ったの?

P:もちろん。ほとんど彼と乗っていたよ。ケリーと乗るのは最高だね。パートナーと乗るのは好きだよ。絶対上手くなる助けになってるよ。一緒に乗ってて楽しい、というライダーはそう多いわけではないけれど、彼は絶対はずせないね。別に、常に1人でいなきゃ、なんて思っていない。誰かと乗るのは好きだよ。ただし好き嫌いは激しいけど。

R:誤解されてる?

P:俺のことを本当に考えてる奴なんて誰もいないと思うし、だから誤解も生まれようがない。(笑)っていうか、俺はライダーだから乗るだけだよ。他になにがあるっていうんだい?

R:スタンダードのビデオではかなり気合が入っていたみたいだけど?

P:ビデオに出れる、って決まった時からね。いいフッテージにしたかった。俺のイメージどおりの仕上がりになっているといいね。

R:ビデオが出たら、そのトリックはもうやらないの?

P:そんなことないと思うよ。技術的な意味で、いくつかは続けていくだろうけど、でも山ほどあるやりたいことが後につかえてるんだ。

R:それって、以前ちょっとカジった程度のトリック、って事?

P:いくつかはね。でもそれ以上にやったことの無いことの方が多いよ。

R:ここ何年かキミは独自のトリックをやっているけど、それ以前はピンキースクェイカーとウイップラッシュ系のトリックばかりだったね。

P:そうだね。その頃は全部の基本的トリックを学んでいた。ヒッチハイカー系、普通のローリング系、いわゆる主流と言われたトリックをね。基礎を作るのにはいい。でもそれが出来た時点で絶対、創造性について考え始めなきゃならない。まだ未知のトリックが山ほどあるからね。

R:将来、リア系の技をやることはあると思う?

P:マニュアルだけはやるね。

R:みんなが持ってる、一番大きなフラットランドに対する誤った認識ってなんだと思う?

P:1つみんなに分かってもらいたいのは、フラットランドは決して時代遅れのものじゃない、ってことだ。フラットランドはもっと凄い、なんて言っていいのかな。あ、質問はなんだったっけ。(笑)
 そうそう、一般の人たちに本質が見えていない。というのもメディアが間違った方向に紹介したり、コンテストの構造自体が、フラットの魅力をボカしている。創造性とセクシーさがフラットランドの魅力なんだ。でもコンテストや雑誌ではそれが上手く伝わっていない。特にセクシーな面は。(笑)

R:キミがやっているトリックの中でも、一番時間がかかったのは何?

P:ノーハンデッドスピンがたぶん一番長いんじゃないかな。

R:そのトリックは、出来ないんじゃないかな、って思わなかった?

P:出来るって分かってたよ。それを決める前でさえ、出来るって確信してたからね。

R:だから、たくさんのトリックがまだ手付かずと思えるわけだ。

P:全部がそうだね。かろうじて手がつけられ始めたって感じかな。

R:もうやるトリックがないよ、っていう奴はもうちょっと視野を広げる必要があると。

P:まさにその通り。フラットが生まれてからというもの、いつの時代もそう言う奴はいたけど。限界があるなんて考えるのはバカげている。限界なんてありゃしないよ。どんなことだって出来る可能性がある。

R:フラットランドコンテストが、より良く運営されていく方法を探ることに興味があるみたいだけど?

P:そうしたい、と思っている。そうしたい。乗ることだけで生活できるのに十分なくらいに大きくしたいんだよ。生活のためにライディング出来るようになる、ってことは絶対いいことだし、その方向にフラット全体を保っていきたい。大きくしたいんだ。その先はぶっつぶれるべきだ。糞食らえってね。(笑)。いや、俺は自分の助けを必要とされることを待ち望んでいるんだ。フラットランドがなんたるかを見せていくことで、より良くなっていくと思うんだ。TVの視聴者にとっても面白いものになると思ってる。

R:ライディングのおかげで、キミはいろんなところを旅行してるね。何か面白いことはあった?

P:旅全てが面白ろかった。旅はいいね。何がいいって、俺が好きなことを、同じく好きな人たちに沢山会えるってことかな。東海岸、西海岸、ヨーロッパ、乗る気にさせてくれる奴らに数え切れないくらい会えた。

R:キミのスケッチを見せてもらったけど、自転車に乗っていないときにハマっていることってあるの?

P:マジに、他にやることなんて無いよ。俺の人生で。(笑)彼女がいるけど。彼女と時間を過ごして、乗って、寝て。マジでそれだけだよ。それ以外にやることなんてないな。

R:どのくらいそういう生活を続けようと思っているの?

P:体が言うこと聞かなくなるまでかな。

R:今までに怪我をしたことは?

P:膝と足首はボロボロだ。何回か怪我して、痛い思いもしてきた。97年はなんとか自転車に乗れた、って感じだったしね。人生最悪の時を過ごしたよ。誰にでも、そういう経験ががあるだろうけど、避けられないことなんだろうね。自転車が乗れることへの感謝の気持ちが、その時本当に分かった気がする。

R:最後にお礼を言いたい人はいる?

P:母親の励ましと支えに。俺のライディング中毒のために、結果的に費やす時間に対するガールフレンドの忍耐に。ずーっと変わることなくサポートし続けてくれて、ヤル気を起こさせてくれるリックに。彼は大きなキッカケを作った。ダチでいてくれて、ヤル気にさせてくれるケリーに。いつも帰る場所でいてくれるマットに。どこかで会ったことがあるみんなに。Drew’s BMXに。
 それと俺のスポーンサーにもお礼をいいたい。Standerd, Nema, PrimoのGreg Walsh、Sun Rims, Dia Compe, Grand Cycle ともちろん俺らを新たなレベルへと前進させつづける魂のライダーたちに。Peace.

Paul Osicka Contest Format

ポールは、このRide BMXに、コンテストフォーマットを載せるために、ポートランドBSコンテストにやって来た。長く、時に苦痛を伴いながらのミーティングの後、ボクは彼に結果を聞いた。
 
R:現在のコンテストフォーマット、1分半2回のランはどう思う?

P:あんまりそれに関しては考えてこなかった。それが上手くいっていない、っていうウワサは聞いていて、ESPNもそれを変えたいと思っていた。コンテストからはずされる、っていう動きや、徐々に影の薄いものになっていたからね。それでオーガナイザーがアイディアを募っていた、って話を聞いたんだ。で幾つかの案を考えてみた。

R:それは?

P:とどのつまり、時間潰しのトリックを追い出す、ってことなんだ。みんながやる必要のないのが、時間潰しのランさ。去年、いくつかのコンテストを見に行って気づいたのが、みんな、ミスをしたくないばかりに、トリックを水増ししてるってことだね。足をつかない、ってことに重点が置かれすぎている。みんな大崩れするのを恐れて、凄いトリックに挑戦しない。それならそれを取り除けば、ベストトリックコンテストにすれば、凄いトリックを見せるために沢山のトライが出来れば、結果、TV映りもよくなるんじゃないか、と考えたんだ。それが俺の考えの根底にあるね。みんな稼げるように、TVをフラットに引き止めたいんだ。

R:みんなそのアイディアに賛成するか、それとも反対するかな?

P:みんながみんな、賛成するとは思わないけど。

R:上手く行きそう?

P:そう願っているよ。正直いって、それが実際に行われてみないことには何もいえないんじゃないかな。上手く行くとすれば、ライダーが全てに気を配って、時間つぶしのトリックをやらない、ってことにかかってくるね。

R:もしその試みが上手くいったとしたら、キミもコンテストに復帰する?

P:多分、最初のは出ない。でもどうなるかは見届けたい。もし俺の思った通りになっていたら、出る可能性もある。

R:他にこのニューフォーマットに関して言いたいことがある?

P:このフォーマットが、ライダーに、創造的な、難易度の高いトリックに挑戦する勇気を与えることを期待したい。時間つぶしのトリック…もう決まることは分かりきっているような…のに悩むことなく。出来ればフラットランドを盛りたてて行く方向に。これがフラットランドにとって、あるべき姿だと信じている。ライダーが個性的であることを勇気付け、全てを進歩させていくために。

R:プロクラス全員がこのフォーマットに則って戦える能力がある、と思う?

P:それは疑う余地はない。みんな才能にあふれたライダーばかりだ。それにみんなやりたい、と思っているクレイジーなトリックがあるんだ。でもそういうトリックを習得するのは凄く時間がかかるし、次のコンテストにすぐ、ってわけには行かないだろう。でもそれが彼らに火をつけて、ピンキースクェイカーとかスカッフのみとかのトリックに悩まされずに、そういった凄いトリックに専念できるようになると思うんだ。これはやりたいことを絞ってくれるし、上手くすれば、フラットランドもエンターテイメントとしても成り立つかもしれない。そうすればTVにも取り上げられて、みんな金を稼ぐことが出来る。根本的に変わっていくんじゃないかな。大会でのトリックの質も向上するだろう。フラットランド全体のレベルを押し上げることになる。理屈では、最高レベルのフラットランド、というものを見ることが出来るようになるはずだ。けど、実際行われるまではなんとも言えない。それが上手くいくことを祈るだけだ。